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最新式一眼レフ、ベッサフレックスTMにつけたウルトラアクロマチックタクマー300ミリF5.6。レンズ長はかなりあり、引き出し式フードを伸ばすとスゴク長く見える。

 

 

 アサヒペンタックスは日本における一眼レフカメラのパイオニア(最近はあまり使われない言葉だが)のひとつといえる。さらには35ミリ判一眼レフを普及させたのもペンタックスだ。最初の製品であるアサヒフレックスシリーズは独自のスクリューマウントを採用していたが、ペンタプリズムを搭載した最初の製品「アサヒペンタックス」(後にペンタックスAPと呼ばれるようになった)からは通称M42プラクチカマウントになり、汎用性を増し、当時としてはとても良い判断を旭光学はしている。ドイツ製の各種レンズが自由に使えるというのは、とりあえず交換レンズ群をすぐに充実させることのできなかったスタート時には、特に輸出の際などに有利だったと思われる。しかし一方ではコツコツと自社開発の交換レンズも揃えているのは旭光学のエライところだ。しかも決しておざなりのラインアップやOEMで間に合わせることもなく、日本では最初期のレトロフォーカスタイプの広角レンズである、タクマー35ミリF4やオートタクマー35ミリF2.3も早くから製品化している。一眼レフの魅力は何より交換レンズの魅力だと旭光学は充分に意識していた結果だろう。

 

※写真をクリックすると大きなサイズでご覧いただけます。

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ベッサフレックスTM・絞りF5.6・1/1000秒 フジROPIII
かなりアンダー露出にしたが、開放ではごくわずかな周辺光量不足が感じられる。
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ベッサフレックスTM・絞りF8・1/250秒 フジROPIII
スミからスミまでシャープだ。わずかだが手巻き形の歪曲収差がある。

 1960年前後の当時、一眼レフの威力をユーザーが感じていたのは望遠レンズがライカなどの距離計カメラに比べ、自由に正確に使えることだった。そうしたわけで、ペンタックスは望遠レンズの品揃えも豊富であった。人気のあった135ミリはもちろん、85ミリから1000ミリまで、現在の一眼レフでもあまり見られない範囲の焦点距離が用意されていたのである。このなかで少し特徴的なことがあって、他の大メーカー、たとえばニコンやキヤノンなどにも見られないレンズ群が存在している。それは200ミリ、300ミリレンズに明るさの異なる2種類のレンズがあることだ。ニコンが200ミリF4のニッコールだけの時代に、F5.6とF3.5、キヤノンが300ミリF4一本の時代にF4とF6.3の2種類が売られていたのだ。大きいが口径比を優先させたレンズと、手持ち撮影を可能にさせるコンパクトなレンズを両方つくり、ユーザーに選択させようというのであろう。軽量小型なペンタックスボディとの組み合わせなら、超望遠レンズ(当時300ミリはすでに超望遠だった)も三脚なしで撮影が可能になる。1970年近くなると、各社ともに、明るさの異なる200ミリ、300ミリの望遠レンズをつくりだすが、ペンタックスはその先端を走っていたのである。

 
 

 私はこのコンパクトなタクマー望遠レンズシリーズが大好きで、タクマー200ミリF5.6、そしてタクマー300ミリF6.3の愛好者だった。現在でもタクマー200ミリF5.6は手元にあり、最近のM42マウントの小ブームのなかでイタズラに遊んでみたりするほどだ。三脚座なしで購入した(手持ちだから不要と思いつつ買った)タクマー300ミリF6.3は、後にウルトラアクロマチックタクマー300ミリF5.6と交換してしまったが、今でもカメラ店で見かけるとつい買ってしまいたくなる。さてこのウルトラアクロマチックタクマー300ミリF5.6である。10年ぐらい昔に手に入れたレンズだ。なにしろ長い名称のレンズだ。高度に色消しがされたレンズらしく赤外フィルムもピント補正なしでOKのようだ。時期的にはあのキヤノンのFL-Fシリーズ望遠、つまり人造蛍石を採用した高性能レンズとほぼ同じような時代に出現している。それ以前に旭光学ではウルトラアクロマチックタクマー85ミリF4.5というレンズを発表していて、ウルトラアクロマチックタクマーと名づけられているのはこの2種類である。85ミリF4.5のほうは紫外線撮影用などのレンズで、ニッコールのUV105ミリレンズみたいなものだ。どうやら水晶レンズを使っているらしく、また人造蛍石も使用しているという。人造蛍石の採用はキヤノンに先んじている。300ミリF5.6のほうも蛍石を使っていて、キヤノンのように派手に宣伝しないのが旭光学らしい。

 
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ベッサフレックスTM・絞りF8・1/250秒 フジROPIII
SMCタクマー以前のコーティングだが、色再現は意外とコクがある。
 

 ウルトラアクロマチックタクマー300ミリF5.6はタクマー伝統のコンパクトレンズと言いたいところだが、実はそれほどコンパクトではない。細身ではあるが、キヤノンFL-F300ミリF5.6やFLヘキサノンAR300ミリF6.3に比べると長い。逆にゆったり設計である。性能はもちろん良い。このレンズは後にSMCタクマー時代になってもそのまま販売されていて、FDレンズになってもFL-F300ミリF5.6がカタログ落ちをしなかったのに似ている。昨今では高性能な高倍率の望遠ズームがあるのでほとんど出番はないけれど、やっぱり大事に使ってやりたい想いがする。これはきっとコンパクトで高性能な300ミリクラスの望遠レンズが欲しくてしょうがなかった時代の自分だけの郷愁の気持なのだろうと思われる。しかしウルトラアクロマチックタクマー300ミリF5.6。やはり長い名前だ。

 

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