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 古いカメラは眺めて、いじくり回しているだけで楽しい。しかしカメラの本分は写真を撮る道具であり、フィルムが許す限り写真を撮らなければいけないと思う。昔のカメラはボディの精度が低く、レンズは暗くコーティングもない、シャッターは遅いしシンクロもない・・・・・などなど不満だらけで、つい二の足を踏んでしまう。しかし一度思い切って撮影に挑戦してみよう。「えっ、こんなによく写るの?」という結果もあり得る。
 もちろん全自動ならぬ「全手動カメラ」だから、目と頭と手を最大限に動かせねばならないが、それだけにいい写真が撮れた時の喜びも大きい。私はプロの写真作家ではないので、自信をもって公開するのには忸怩(じくじ)たる思いもあるが、昔のカメラでもこのくらいは写るのだという証明としてご覧頂きたい。

●高島鎮雄先生のプロフィールはこちら
■01〜07   ■08〜14   ■15〜22
※写真をクリックすると、大きなサイズで御覧頂けます。



プロミネント(1930年)
ヘリア105mm F4.5

奥石廊寸猫

ドイツの名門フォクトレンダーの最高級6x9cm判スプリングカメラがプロミネント。ボタンを押すと前蓋が開き、レンズとシャッターが蛇腹を引いてするすると優雅に出てくる。距離計連動で、光学式露出計も付いている。レンズは3群3枚の前群と後群を2枚貼り合わせとした3群5枚のヘリアで、昔から繊細で美しい描画で知られた。カラー時代以前でコーティングもないが、余程過酷な条件下でない限り、カラーでも充分に使える。




エブナー4.5 X 6cm(1934)
プリモター 7.5cm F4.5

日光晩秋

電蓄(電気蓄音機=レコードプレイヤー)のメーカーが1924-25年の2年間だけ造ったスプリングカメラ。6x9cm判とこの4.5x6cm判(セミ判)の2種があった。最大の特徴はボディが金属ではなくダークブラウンのベークライト製であることだ。プリモター・レンズはドイツ東端の街ゲルリッツにあったフーゴー・マイヤー社の製品。3群4枚構成のテッサー・タイプで、描写はテッサーに準じて鮮鋭である。日陰での撮影だが色も悪くない。




スーパーコダック620(1938)
コダック・アナスティグマットスペシャル 100mm F3.5

みてござる

スーパーコダック620は大コダックが総力を挙げて作った“昭和13年当時の夢のカメラ”。それまでにもセルン露出計を内蔵したものはあったが、本機は史上初のシャッター優先の自動露出(EE)カメラだ。デザインは著名な工業デザイナー、ウォルター・ダーウィン・ティーグの手による斬新なもの。細軸の620フィルムの6x9cm判。自社製のレンズはテッサー・タイプ改の5枚構成とされ、私自身こんなによく写るとは思わなかった。




アダムス ペルト(1930)
ロス・コンビナブル 102mm F5.5

奥入瀬の流れ

アダムスは19世紀の中頃からある英国の古いカメラメーカーの一つ。ベルトは一見スプリングカメラのようだが、前蓋を引き下ろし、そのレールの上にレンズ、シャッターを引き出す方式。ボディは木製だ。ロスも古いレンズメーカーで、コンビナブルは1913年の設計。4枚貼り合わせのシングル・アナスチグマットを2個向かい合わせたダブル・アナスチグマットで、前群を外すと倍の焦点距離になる。クリアで鮮鋭だが、雰囲気描写に優れる。




N&Gロールフィルムシビル(1930)
ロス・エクスプレス 112mm F4.5

太正池に映る朝の焼岳

N&G(ニューマン&ガーディア)は工芸品的なハンドカメラ、“シビル”で有名な英国のメーカーだ。これはそのロールフィルム版で、120フィルムに6x9cm判を撮る。シャッターは空気ポンプ式のガバナーで、ほとんど音も振動もない。レンズメーカーのロスは長くドイツ、カール・ツァイスのライセンスでレンズを造ってきた会社。エクスプレスもツァイスのテッサーの英国版で、性能はほぼ同等だが、私は空気感に優れるこの方が好きだ。



ライカIIIb(1938)
ズミタール 50mm F2

アイゼンマルクト広場

ライカIIIbはダイキャストボディになる直前の板金ボディの最後のモデルで、ドイツの国力、工業力がピークに達した頃の製品である。距離計とファインダーの間隔を近づけたことが最大の改良点だ。自製のズミター・レンズはズマールを改良した4群7枚のガウス型で、開放近くではまだコマ収差によるフレアが残るが、絞ればご覧のとおりかなりクリアになる。写真はバルナックが1913年のウア・ライカで撮ったヴェッツラー市の中心部である。




N&Gフォーディング・レフレックス(1921)
ロス・テレロス 292mm F5.5

鳥海は見えず

昔の乾板用木製大型一眼レフはどうしても大きく重い。そこで金属との混成にし、小さく折りたためるようにしたのがフォールディング・レフレックスで、本機はその一例だ。写真はロールホルダーを付けて120フィルムに6x9cm判で撮った。ロスの望遠レンズを装着して山形県酒田市の郊外から鳥海山を狙ったが、生憎の天候で山は見えず、最上川がゆったりと流れる庄内平野の風景となった。少々眠たいのは天候のゆえで、レンズのせいではない。



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